街中で偶然すれ違った、あの流麗で、まるで生き物のように躍動感あふれるクーペ。その唯一無二のデザインに心を奪われ、車種を調べてみたら、それが「プジョーRCZ」だった。そんな経験はありませんか?しかし、その興奮も束の間、インターネットで検索してみると、『プジョーRCZ ダサい』などという、にわかには信じがたいキーワードが目に飛び込んできて、混乱しているのではないでしょうか。
「こんなにも美しく、官能的なデザインなのに、どこがダサいというんだ?」「でも、もしかしたら自分の美的センスが、世間とズレているだけなのだろうか…」。その気持ち、非常によく分かります。RCZのような、強烈なオリジナリティと個性を持つクルマは、評価が両極端に分かれがちです。自分が「かっこいい」と心から信じるものを、他人から否定されると、誰だって不安になりますよね。
ですが、もうその不安に悩まされる必要はありません。ご安心ください。この記事では、なぜ一部でプジョーRCZが「ダサい」と言われてしまうのか、その理由を冷静かつ客観的に分析します。そして、それが単なる好みの問題なのか、それともデザインとして何か本質的な欠点があるのか、その論争に終止符を打ちます。
さらに、この記事を読み終える頃には、「ダサい」という評価がいかに一面的なものであるか、そしてRCZのデザインがいかに計算され尽くした、時代を超えるアートピースであるかが、深くご理解いただけるはずです。もちろん、生産終了から時が経った中古車としてRCZと付き合っていく上での、デザイン以外のリアルな注意点や欠点についても、包み隠さずお伝えします。さあ、あなたもRCZの真の価値を知る旅に出ましょう。
プジョーRCZは本当にダサいのか?そのデザイン論争に終止符を
- なぜプジョーRCZは一部で「ダサい」と言われてしまうのか?その3つの理由
- 天才の仕事!「ダブルバブルルーフ」という唯一無二の造形美
- 永遠のライバル!アウディTTとのデザイン思想の決定的な違い
- オーナーのリアルな口コミ・評価は?「ダサい」vs「かっこいい」
- 生産終了から10年。今見ても古臭い?色褪せることのないデザインの秘密
- エクステリアに負けない魅力!RCZの知的なインテリアを解説
なぜプジョーRCZは一部で「ダサい」と言われてしまうのか?その3つの理由
- 理由①:個性的すぎる「ダブルバブルルーフ」が万人に受け入れられない
- 理由②:当時のプジョー車に共通する「猫科」のようなフロントフェイスが好みを分ける
- 理由③:ライバルである「アウディTT」の模倣と見なされることがある
これほどまでに美しいRCZが、なぜ一部で「ダサい」と揶揄されてしまうのでしょうか。その背景には、いくつかの理由が考えられます。RCZのデザインを正しく評価するためにも、まずはアンチ側の意見にも、真摯に耳を傾けてみましょう。
第一の理由として挙げられるのが、RCZ最大の特徴である「ダブルバブルルーフ」の存在です。運転席と助手席の頭上部分が、二つのコブのように膨らんだこのルーフ形状は、極めて個性的で、他に類を見ません。この独創性こそがRCZの魅力なのですが、見慣れないデザインであるがゆえに、「奇妙だ」「やりすぎだ」と感じてしまう人がいるのも事実です。特に、シンプルでクリーンなデザインを好む層からは、違和感を持たれやすいのかもしれません。
第二に、当時のプジョー車に共通する、ライオンをモチーフとしたフロントフェイスです。大きく吊り上がったヘッドライトと、大きな口を開けたようなフロントグリルは、「猫顔」などと表現され、非常にアグレッシブです。この動物的な、有機的なデザインが、「好き」という人と、「生々しくて苦手」という人で、好みがはっきりと分かれるポイントとなっています。優等生的なデザインのクルマが多い中で、RCZの顔つきは、良くも悪くも「クセが強い」のです。
そして第三の理由が、永遠のライバルである「アウディTT」の存在です。アーチ状のルーフラインを持つコンパクトクーペ、というカテゴリーが同じであるため、「TTのデザインを真似した、亜流のクルマだ」という、心ない見方をされることがあります。しかし、これは両車のデザインコンセプトを理解していない、表面的な意見に過ぎません。これについては、後のセクションで詳しく比較・解説します。
このように、RCZが「ダサい」と言われる理由は、そのすべての要素が「個性的すぎる」という一点に集約されます。しかし、見方を変えれば、それは「その他大勢に埋もれない、唯一無二の存在」であることの証明でもあるのです。
天才の仕事!「ダブルバブルルーフ」という唯一無二の造形美
- イタリアのカロッツェリア「ザガート」が用いた伝統的なデザイン手法
- 空気抵抗の低減と、ヘルメットを被った際のヘッドクリアランス確保という機能的な意味を持つ
- この複雑な形状を、量産車で実現したプジョーの技術力は驚異的
プジョーRCZのデザインを語る上で、絶対に外すことができないのが、ルーフからリアウィンドウまでを一枚のガラスで覆う「ダブルバブルルーフ」です。一部では「奇妙だ」と評されることもあるこの形状ですが、結論から言うと、これは自動車デザインの歴史に裏打ちされた、極めて機能的で、かつ芸術的なディテールなのです。「ダサい」などという言葉で片付けられるほど、浅いものでは決してありません。
この「ダブルバブル」というデザイン手法は、もともと1950年代に、イタリアの伝説的なカロッツェリア(車体デザイン工房)である「ザガート」が、レーシングカーのために生み出したものです。その目的は二つありました。一つは、ルーフ中央を凹ませることで、空気抵抗を低減させるという空力的な効果。もう一つは、ヘルメットを被ったドライバーの頭上スペースを確保するという、実用的な効果です。つまり、ダブルバブルルーフは、見た目の奇抜さだけでなく、レースで勝つための機能性から生まれた、インテリジェントなデザインなのです。
RCZは、この伝統的なレーシングカーのデザインを、現代のロードカーに見事に蘇らせました。そして、驚くべきは、この複雑な三次元曲面を持つガラスルーフを、コンセプトカーの段階から一切妥協することなく、そのまま量産車として市販してしまったプジョーの情熱と技術力です。一枚のガラスを、これほどまでに美しく、そして歪みなく成形するのは、並大抵のことではありません。このルーフを実現できたこと自体が、プジョーというメーカーの技術力の高さを証明しています。
リアウィンドウに流れ込む二つの水の雫のようなラインは、光の当たり方によって、まるで生き物のように表情を変え、見る者を飽きさせません。これは、他のどんなクルマにもない、RCZだけの特権です。このダブルバブルルーフの価値を理解できた時、あなたはもう、RCZのデザインの本質に触れていると言えるでしょう。
永遠のライバル!アウディTTとのデザイン思想の決定的な違い
- アウディTTは、バウハウス思想に基づく、幾何学的でクールなデザイン
- プジョーRCZは、動物的な躍動感を持つ、有機的で官能的なデザイン
- 両者は似て非なる存在であり、どちらが優れているかという議論は無意味
プジョーRCZが「ダサい」と言われる理由の一つに、「アウディTTの模倣」という心ない声があることは、先に述べた通りです。確かに、コンパクトなFFベースのクーペで、アーチ状のルーフラインを持つという点では、両者は同じカテゴリーに属します。しかし、そのデザインの根底に流れる思想、つまり「哲学」は、全くの別物です。結論として、RCZとTTは、似て非なる、それぞれが独自の魅力を持つ孤高の存在であり、両者を比較して優劣をつけること自体が、ナンセンスなのです。
アウディTTのデザインは、ドイツのデザイン思想「バウハウス」に大きな影響を受けています。これは、無駄な装飾を排し、円や直線といった幾何学的な要素を組み合わせることで、機能的で、合理的で、クールな美しさを追求する考え方です。TTの完璧な半円を描くルーフラインや、円をモチーフにしたインテリアデザインは、まさにその思想の現れです。例えるなら、精密に設計された、冷徹で知的なインダストリアルデザイン(工業製品)のような美しさが、TTの魅力です。
一方、プジョーRCZのデザインは、全く逆のアプローチを取ります。ライオンをエンブレムに掲げるプジョーらしく、そのデザインは、しなやかに躍動する動物のような、有機的で、官能的なラインで構成されています。筋肉の隆起を思わせる前後のフェンダー、そして生命の躍動を感じさせるダブルバブルルーフ。そこにあるのは、計算され尽くした生命感、グラマラスな色気です。例えるなら、ロダンの彫刻のような、肉体的でエモーショナルな美しさが、RCZの魅力と言えるでしょう。
以下に、両車のデザイン思想の違いをまとめます。
車種 | デザインコンセプト | キーワード | 例えるなら |
---|---|---|---|
プジョー RCZ | 有機的、官能的、躍動的 | 生命感、グラマラス、筋肉質 | 肉体美を誇る彫刻 |
アウディ TT | 幾何学的、合理的、クール | 無機質、知的、ミニマル | 精密な工業製品 |
このように、両者は目指す頂が全く異なります。どちらのデザインに、より心を揺さぶられるか。それは、あなたの美意識が試される、楽しい問いかけなのです。
オーナーのリアルな口コミ・評価は?「ダサい」vs「かっこいい」
- 「ダサい」という声は少数派で、ほとんどのオーナーはデザインに大満足している
- 「唯一無二」「アート作品のよう」といった、デザインを絶賛する声が多数
- 一方で、後席の狭さやナビの古さなど、実用面での不満の声はある
デザインの評価は主観的なものですが、実際にそのクルマを所有しているオーナーたちの「生の声」は、購入を検討する上で非常に重要な参考情報となります。では、プジョーRCZのオーナーたちは、そのデザインについて、本当に「ダサい」と思っているのでしょうか。SNSやクチコミサイトを調査してみると、その答えは明確です。
結論から言うと、「ダサい」という意見は、オーナーからはほとんど聞かれません。むしろ、その逆です。圧倒的多数のオーナーが、RCZの最大な魅力として、その唯一無二のデザインを挙げています。「どこに行っても注目される」「アート作品を所有しているような満足感がある」「何年経っても全く飽きない」といった、絶賛の嵐です。特に、ダブルバブルルーフのデザインは、多くのオーナーにとって、このクルマを選んだ決定的な理由となっており、その造形美に心から満足している様子が伺えます。
また、「アウディTTとは違う、フランス車らしい色気が良い」「このグラマラスなボディラインがたまらない」といった、その官能的なデザインを高く評価する声も目立ちます。RCZのオーナーは、万人受けするクルマではなく、自分だけの特別な一台を求める、確固たる価値観を持った人々が多いようです。彼らにとって、「ダサい」という外部の評価は、全く気にならない、あるいは、むしろその他大勢と違うことの証明として、心地よくさえ感じているのかもしれません。
もちろん、デザイン以外の部分、つまり実用面に関しては、不満の声も聞かれます。「後部座席は人が乗れるスペースではない、完全に荷物置き場」「純正ナビが古すぎて使い物にならない」「ドリンクホルダーの位置が不便」など、クーペならではの割り切りが必要な点については、多くのオーナーが指摘しています。しかし、それらの欠点さえも、「このデザインのためなら許せる」と考えるのが、RCZオーナーの共通した認識のようです。デザインという一点において、RCZはオーナーに絶大な満足感を与えている、紛れもない事実です。
生産終了から10年。今見ても古臭い?色褪せることのないデザインの秘密
- RCZのデザインは、特定の時代の流行に依存していないため、古さを感じさせない
- コンセプトカーのデザインを、ほぼそのまま市販化したことによる完成度の高さ
- 10年後の今だからこそ、その先進性とオリジナリティが再評価されている
プジョーRCZの日本での販売が終了したのは2016年。最終モデルから数えても、すでに10年近くが経過しようとしています。そうなると気になるのが、「今見ても、デザインは古臭くないか?」という点でしょう。自動車のデザインは、数年で陳腐化してしまうことも少なくありません。しかし、RCZに関しては、その心配は無用です。結論として、RCZのデザインは、10年という時の流れを全く感じさせない、普遍的な美しさを保ち続けています。
なぜ、RCZのデザインは色褪せないのでしょうか。その秘密は、特定の時代のデザイントレンドに安易に乗っからなかったことにあります。RCZのデザインは、2007年に発表されたコンセプトカー「308 RCZ」のスタイリングを、驚くほど忠実に再現しています。このコンセプトカーが持っていた、未来的で、純粋な造形美が、市販車にもそのまま受け継がれているため、量産車特有の現実的な制約による妥協が、ほとんど感じられないのです。アルミナム製のルーフアーチや、ダブルバブルルーフといった要素は、まさにコンセプトカーそのものです。
むしろ、昨今の自動車デザインが、複雑なプレスラインや過剰な装飾を多用する傾向にある中で、RCZが持つ、流れるようなシンプルな塊感と、有機的な曲面の美しさは、今だからこそ、より際立って見えます。時代がRCZに追いついた、とさえ言えるかもしれません。10年後の今、改めてRCZを見ると、そのデザインがいかに先進的で、完成度の高いものであったかを、再認識させられます。
中古車としてRCZを選ぶということは、単に古いクルマを手に入れるということではありません。それは、10年経っても輝きを失わない、普遍的な価値を持つ「アート作品」のオーナーになる、ということなのです。流行遅れになる心配は一切ありません。あなたは、自信を持って、このタイムレスなデザインのクルマを、現代の路上で輝かせることができるのです。
エクステリアに負けない魅力!RCZの知的なインテリアを解説
- 航空機の翼をモチーフにした、ドライバー中心のダッシュボードデザイン
- 随所に本革ステッチやクロームパーツをあしらい、高い質感を演出
- アナログ時計など、フランス車らしいお洒落な遊び心も魅力
プジョーRCZの魅力は、その衝撃的なエクステリアデザインだけではありません。ドアを開けて乗り込んだ瞬間に広がる、インテリア空間もまた、他のどのクルマにもない、独自の魅力に満ちています。結論から言うと、RCZのインテリアは、スポーティさと、フランス車ならではのエレガンスが、見事に融合した、非常に知的な空間に仕上がっています。
まず、ドライバーズシートに座って最初に目を引くのが、ダッシュボードのデザインです。航空機の翼(アビエイション)をモチーフにしたというその形状は、緩やかなカーブを描きながら、ドライバーを優しく包み込みます。すべてのスイッチ類が、ドライバーが自然に手を伸ばせる範囲に配置されており、運転への集中力を高めてくれる、まさに「コクピット」と呼ぶにふさわしいデザインです。ダッシュボードの上部には、本革が奢られ、丁寧なステッチが施されるなど、質感も非常に高いものがあります。
細部のディテールにも、プジョーらしい遊び心が溢れています。例えば、センターコンソールの中央には、クラシックなアナログ時計が配置されています。デジタル表示が主流の現代において、このアナログ時計の存在は、車内に温かみと、時間さえも優雅に感じさせる、フランス車ならではの粋な演出です。また、クロームメッキが施されたシフトノブや、メーターリングなども、インテリアの質感を高める上で、効果的なアクセントとなっています。
シートは、ヘッドレスト一体型のスポーティなバケットタイプで、身体をしっかりとサポートしてくれます。レザーシート仕様を選べば、その高級感はさらに高まります。もちろん、後席の狭さや、ナビの古さといった、現代のクルマと比べて見劣りする点も存在します。しかし、そうした実用面の欠点を補って余りあるほどの、デザイン的な魅力と、高い質感が、RCZのインテリアには備わっているのです。エクステリアと同じく、このインテリアもまた、あなたを満足させるに足る、特別な空間であることは間違いありません。
デザイン以外の欠点は?中古RCZ購入で後悔しないために
- 避けては通れない「故障」のリスクと、その具体的な事例
- 意外と走る?1.6Lターボエンジンの実力とリアルな燃費
- 乗り心地と積載性。クーペとしての現実的な使い勝手
- 古さは否めない…ナビゲーションシステムの現実的な解決策
- 【FAQ】プジョーRCZの中古車選びに関する、よくある質問
- 【総まとめ】プジョーRCZは「ダサい」のではなく「孤高」の存在
避けては通れない「故障」のリスクと、その具体的な事例
- BMWと共同開発した1.6L直噴ターボエンジンには、特有のウィークポイントが存在
- タイミングチェーンの伸びや、高圧燃料ポンプの不具合などが代表例
- 信頼できるプジョー専門の整備工場を「主治医」に持つことが絶対条件
プジョーRCZの美しいデザインに心を奪われ、中古車での購入を具体的に検討し始めた時、必ず向き合わなければならないのが、「故障」のリスクです。デザインがどれほど素晴らしくても、クルマとして正常に機能しなければ意味がありません。結論から言うと、RCZは、特にエンジン周りに、いくつかの特有のウィークポイント(弱点)を抱えており、購入には注意が必要です。
RCZに搭載されている1.6L直噴ターボエンジンは、BMWと共同開発されたもので、MINIなどにも搭載されている名機です。優れた走行性能を発揮する一方で、いくつかの「持病」とも言えるトラブルが報告されています。最も有名なのが、「タイミングチェーン」に関する問題です。チェーンが伸びてしまい、エンジン不調や、最悪の場合はエンジンブローにつながる可能性があります。また、高圧燃料ポンプの故障や、ターボチャージャー周りのトラブルも、比較的よく聞かれる事例です。
これらのトラブルは、必ずしもすべての車両で発生するわけではありません。しかし、中古車として購入する以上、そうしたリスクが存在することは、明確に認識しておく必要があります。特に、オイル交換などの基本的なメンテナンスを怠ってきた個体や、過走行の車両は、そのリスクがより高まります。価格の安さだけで、素性の分からない中古車に飛びつくのは、非常に危険な行為と言えるでしょう。
では、どうすれば良いのでしょうか。後悔しないための絶対条件は、プジョー車、あるいはフランス車全般の整備に精通した、信頼できる専門工場を「主治医」として見つけておくことです。購入前の点検(購入前診断)を依頼し、ウィークポイントを徹底的にチェックしてもらう。そして、購入後も、その工場で定期的なメンテナンスを行う。そうすることで、大きなトラブルを未然に防ぎ、安心してRCZとのカーライフを楽しむことができます。デザインの美しさの裏側にある、この機械的なリスクを理解し、正しく向き合うこと。それが、中古RCZオーナーに求められる、最低限の作法なのです。
意外と走る?1.6Lターボエンジンの実力とリアルな燃費
- 1.6Lという小排気量ながら、ターボチャージャーで十分なパワーを発揮
- 6速MTモデルは、よりダイレクトでスポーティな走りを楽しめる
- 燃費は、カタログ値で12〜14km/L程度。決して悪くはない数値
RCZの心臓部である、1.6L直噴ターボエンジン。排気量だけを聞くと、「クーペなのに、1600ccではパワー不足なのでは?」と不安に思う方もいるかもしれません。しかし、その心配は無用です。結論として、RCZのエンジンは、その見た目に違わぬ、非常にスポーティで楽しい走りを提供してくれます。
その秘密は、ターボチャージャーにあります。低回転域から力強いトルクを発生させるため、街中でのストップ&ゴーでも、ストレスを感じることはありません。そして、アクセルを深く踏み込めば、小排気量エンジンとは思えないほどの、気持ちの良い加速感を味わうことができます。特に、200馬力を発生する6速マニュアルトランスミッション(MT)モデルは、よりダイレクトなエンジンフィールと、自分でクルマを操る楽しさを満喫したいという、運転好きにはたまらない仕様です。オートマチックトランスミッション(AT)モデルも、日常的な使い勝手では十分な性能を持っていますが、RCZの真の魅力を引き出すなら、MTモデルを積極的に選びたいところです。
気になる燃費性能ですが、これも「意外と悪くない」というのが正直な評価です。10・15モード燃費のカタログ値で見ると、ATモデルで12.2km/L、MTモデルでは14.2km/Lとなっています。もちろん、これはあくまでカタログ上の数値であり、実燃費は運転スタイルや交通状況によって変動します。オーナーの口コミなどを見ると、市街地走行では8〜10km/L、高速道路を巡航すれば13〜15km/L程度が、おおよその目安となるようです。ハイオク仕様ではありますが、このデザインと走行性能を持つクーペとしては、十分に納得できる、経済的な数値と言えるのではないでしょうか。
故障のリスクという側面はありますが、エンジンそのものが持つパフォーマンスや楽しさ、そして経済性は、RCZの大きな魅力の一つです。ぜひ、試乗の機会があれば、その軽快でパワフルな走りを、ご自身の身体で体感してみてください。きっと、そのギャップに驚かされるはずです。
乗り心地と積載性。クーペとしての現実的な使い勝手
- 乗り心地は、見た目から想像するよりもしなやかで快適
- 後部座席は、大人が乗るには不可能な、非常用のスペースと割り切るべき
- トランクルームは意外と広く、ゴルフバッグも積載可能
スペシャルティクーペであるRCZ。その低い車高と大径ホイールから、「乗り心地はかなり硬くて、実用性も低いのでは?」と想像する方が多いでしょう。しかし、ここにも良い意味での裏切りが隠されています。結論から言うと、RCZの乗り心地は、プジョーならではの「猫足」の片鱗を感じさせる、意外なほど快適なものです。
もちろん、スポーツカーなので、路面の凹凸をまったく感じない、というわけではありません。しかし、それは単に硬いのではなく、路面からの入力をしなやかにいなし、ボディの揺れを素早く収束させる、非常に質の高い足回りのセッティングが施されています。特に、高速道路での安定性は抜群で、長距離を移動しても、疲れを感じにくいのが特徴です。ドイツ車のような、ガチガチの硬さとは一線を画す、フランス車らしい、どこか優雅で快適な乗り心地は、RCZの大きな美点の一つです。
一方で、実用面で完全に割り切りが必要なのが「後部座席」です。カタログ上は4人乗り(2+2)となっていますが、これはあくまで緊急用です。後部座席は、大人が長時間座ることは不可能で、小学生低学年までが限界でしょう。基本的には、「手荷物やジャケットを置くためのスペース」と考えるのが現実的です。独身の方や、夫婦二人で乗ることがメインの方であれば問題ありませんが、ファミリーカーとしての使用を考えている場合は、購入を諦めるべきです。
しかし、その狭い後席とは対照的に、トランクルームの容量は意外と大きいのが嬉しい驚きです。その容量は384Lと、このクラスのクーペとしては、かなり優秀な数値を誇ります。さらに、後部座席の背もたれを倒せば、ラゲッジスペースを拡大することも可能です。オーナーのレビューによれば、ゴルフバッグも、ドライバーを抜くなどの工夫をすれば、なんとか1つ、あるいは2つ積載可能とのこと。クーペとしてのデザイン性を保ちながらも、最低限の実用性は確保されている。このあたりにも、プジョーの良心を感じることができます。
古さは否めない…ナビゲーションシステムの現実的な解決策
- ダッシュボードに格納される純正ポップアップ式ナビは、性能的に現代では通用しない
- 地図データの更新も終了しており、ナビとしての機能は期待できない
- スマートフォンホルダーの設置や、2DINナビへの換装キットの利用が現実的な解決策
生産終了から時間が経過した中古車を購入する上で、避けて通れないのが、ナビゲーションシステムやオーディオといった、電子装備の「古さ」です。プジョーRCZも、この点においては例外ではありません。結論として、RCZに標準装備されているポップアップ式の純正ナビは、現代の基準では、残念ながら「使い物にならない」レベルと断言できます。
ダッシュボードから電動で立ち上がるギミックは、登場当時は先進的に見えましたが、その中身は2010年代初頭のものです。地図表示は粗く、タッチパネルの反応も鈍い。そして何より、地図データの更新サービスがすでに終了しているため、新しい道路や施設は一切表示されません。ナビゲーションシステムとしては、もはや機能しないと考えた方が良いでしょう。また、Bluetooth接続機能も、世代が古いため、最新のスマートフォンとの相性が悪い場合もあります。
では、この明らかな欠点を、どのように解決すれば良いのでしょうか。最も手軽で、コストのかからない方法は、スマートフォンホルダーを設置し、GoogleマップやYahoo!カーナビといった、最新の地図アプリを利用することです。これなら、常に最新の地図と交通情報を使って、快適なナビゲーションが可能です。音声案内は、BluetoothやAUX端子を通じて、クルマのスピーカーから出すことができます。
もし、見た目にもこだわり、より本格的なシステムを導入したいのであれば、社外品のナビに交換するという選択肢もあります。RCZ専用に設計された「2DINナビ取り付けキット」というものが市販されており、これを利用すれば、純正ナビがあった場所に、最新のカーナビゲーションシステムをスマートにインストールすることが可能です。ただし、取り付けには専門的な知識と技術が必要なため、カーナビのプロショップなどに依頼する必要があり、費用も十数万円からと、それなりにかかります。自分の予算や、どこまで快適性を求めるかに応じて、最適な解決策を選択することが重要です。
【FAQ】プジョーRCZの中古車選びに関する、よくある質問
- MT(マニュアル)とAT(オートマ)では、MTの方がリセールバリューは高い傾向
- 右ハンドルと左ハンドルが存在するが、運転感覚や操作性に大きな差はない
- 購入前の試乗は、クルマの状態を知る上で絶対に不可欠
ここでは、プジョーRCZの中古車購入を検討する上で、多くの方が抱くであろう、さらに具体的な疑問について、Q&A形式でお答えします。
Q1. ATとMT、どちらのモデルを選ぶべきですか? また、リセールバリューに差はありますか?
A1. どちらを選ぶべきかは、あなたの運転スタイルと、何を重視するかによります。手軽で快適な運転を求めるならAT、クルマを操る楽しさを満喫したいならMTがおすすめです。ただし、前述の通り、RCZのスポーティなキャラクターを最大限に引き出すのは、200馬力のエンジンを搭載した6速MTモデルです。リセールバリューに関しても、RCZのような趣味性の高いクルマでは、希少価値のあるMTモデルの方が、ATモデルよりも高く評価される傾向にあります。「MTを運転できる」という方であれば、ぜひMTモデルを積極的に検討してみてください。
Q2. RCZには、右ハンドルと左ハンドルの両方が存在しますが、どちらが良いのでしょうか?
A2. RCZは、正規輸入されていたモデルのほとんどが右ハンドルですが、並行輸入などで左ハンドルの個体も市場に存在します。日本の道路事情を考えれば、やはり右ハンドルの方が、料金所の支払いや、右折時の視界確保などで、日常的な使い勝手は良いでしょう。しかし、ペダルレイアウトについては、「左ハンドルの方が自然だ」と感じる人もいます。右ハンドル仕様では、タイヤハウスの出っ張りの影響で、ペダルがやや左にオフセットしているため、慣れるまで違和感を持つかもしれません。こればかりは、実際に両方を試乗して、ご自身の感覚に合う方を選ぶのが一番です。
Q3. 中古車を購入する際、試乗せずに決めてしまっても大丈夫ですか?
A3. いいえ、絶対にやめるべきです。特にRCZのような、年数が経過した輸入車の場合、試乗はクルマの状態を判断するための最も重要なステップです。試乗することで、エンジンやトランスミッションの異音、足回りからのガタ、電装系の不具合など、カタログや写真だけでは分からない多くの情報を得ることができます。また、乗り心地やハンドリングが、本当に自分の好みに合っているかを確認する唯一の機会でもあります。もし販売店が試乗を渋るようであれば、その店からの購入は見送った方が賢明かもしれません。
【総まとめ】プジョーRCZは「ダサい」のではなく「孤高」の存在
「プジョーRCZはダサいのか」という、挑戦的な問いから始まったこの記事も、いよいよ終わりです。最後に、RCZというクルマの本質をまとめます。
- デザイン:「ダサい」という評価は、その圧倒的な個性の裏返し。ダブルバブルルーフをはじめとするデザインは、自動車史に残るアート作品である。
- 走行性能:1.6Lターボエンジンは、見た目に違わぬパワフルで楽しい走りを提供。乗り心地も、見た目より快適。
- 実用性:後席は非常用と割り切る必要があるが、トランクは意外と広く、最低限の実用性は確保されている。
- 欠点とリスク:エンジン周りの故障リスクや、ナビの古さといった、中古輸入車ならではの欠点は確かに存在する。
- オーナーになる覚悟:これらの欠点を理解し、信頼できる主治医を見つけ、愛情を持ってメンテナンスできる「覚悟」が求められる。
結論として、プジョーRCZは、「ダサい」クルマでは決してありません。それは、万人受けする優等生的なデザインを拒否し、自らの信じる美学を貫き通した、「孤高」の存在なのです。その価値観に共感し、その小さな欠点さえも愛おしいと思える人にとっては、これ以上ない、最高のパートナーとなってくれるでしょう。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
プジョーRCZは、ただの移動手段ではありません。それは、オーナーの感性を刺激し、日常を非日常へと変えてくれる、一台のアートピースです。生産が終了し、街で見かける機会が少なくなった今だからこそ、その存在感は、ますます輝きを増しているように感じます。
この記事が、あなたがRCZに対して抱いていた不安を解消し、その真の魅力に気づくきっかけとなったなら、筆者としてこれほどの喜びはありません。ぜひ、中古車市場という名の美術館で、あなただけの特別な一台を探す旅に出てみてください。その孤高の美しさを、現代の路上で再び輝かせるのは、あなたかもしれません。