日本の高級セダンの代名詞として、長年にわたりその名を轟かせてきたトヨタ・クラウン。その中でも、スポーティな走りとしなやかな乗り心地で多くのドライバーを魅了するのが「RS」グレードです。しかし、いざ購入を検討し始めると、「RS」と、その上位に位置する「RSアドバンス」という二つのグレードが存在することに気づき、「一体何が違うの?」「価格差に見合うだけの価値はあるの?」と頭を悩ませる方も少なくないのではないでしょうか。
その気持ち、非常によく分かります。同じ「RS」という名前を冠していながら、カタログを見比べると細かな装備の違いがあり、価格も決して安くはない差がある。どちらを選べば自分のカーライフがより豊かになるのか、判断に迷うのは当然のことです。私も以前、15代目クラウンの購入を考えた際、この二つのグレードの違いを徹底的に調べ上げ、ディーラーの営業担当者にも質問攻めにした経験があります。
ですが、もう心配いりません。この記事では、15代目クラウン(S22#型)を中心に、スポーティグレードである「RS」と、そのさらに上級仕様である「RSアドバンス」の違いを、エクステリア、インテリア、安全装備、そしてもちろん価格といったあらゆる角度から、誰にでも分かりやすく徹底的に比較・解説します。
結論から申し上げますと、RSアドバンスは、単にRSにいくつかのオプションを追加しただけの上位グレードではありません。そこには、クラウンのスポーティな魅力をさらに深化させ、所有する喜びを格段に高めてくれる、特別な装備と価値が凝縮されています。しかし、その全てが必ずしも万人に必要なものとは限りません。この記事を読めば、あなたにとって本当に最適な「RS」がどちらなのか、明確な答えが見つかり、後悔のないクラウン選びができるようになるはずです。
クラウンRSとRSアドバンス 何が違う?基本情報を徹底比較
- そもそもクラウン「RS」とは?スポーティグレードとしての特徴と位置づけ
- RSとRSアドバンスの主な違い一覧!一目で分かる詳細比較表
- エクステリアデザインの違いはここ!専用ホイールやメッキ加飾の差
- インテリアの質感と快適装備!本革シートやナビゲーションシステムの違い
- 安全装備・運転支援システムの違い!アドバンスならではの先進機能とは
- パワートレインと走行性能に差はある?2.0Lターボとハイブリッドモデル
そもそもクラウン「RS」とは?スポーティグレードとしての特徴と位置づけ
- 15代目クラウン(S22#型)に設定されたスポーティグレード
- 専用エクステリアや引き締められた足回りが特徴
- 「ロイヤルサルーン」系とは異なる、走りを楽しむためのクラウン
クラウンRSとRSアドバンスの違いを理解する前に、まず「RS」というグレードが、クラウンのラインナップの中でどのような位置づけにあるのかを知っておく必要があります。「RS」は「Runabout Sports」の略とも言われ、その名の通り、クラウンの持つ上質な乗り心地や静粛性はそのままに、よりスポーティでダイナミックな走りを楽しむために設定されたグレードです。
特に、2018年に登場した15代目クラウン(S22#型)において、RSグレードは大きな注目を集めました。TNGAプラットフォームの採用による低重心化と、ニュルブルクリンクでの走り込みによって鍛え上げられた足回りによって、これまでのクラウンのイメージを覆すほどの、シャープで応答性の高いハンドリング性能を実現。「意のままに操れるFRセダン」としての魅力を前面に押し出しました。
エクステリアでは、専用デザインのフロントグリルやバンパー、サイドステップ、そして特徴的な4本出しのエキゾーストテールパイプなどが与えられ、標準グレードや「ロイヤルサルーン」系の落ち着いた雰囲気とは一線を画す、アグレッシブで精悍なスタイリングをまとっています。インテリアにも、専用のスポーツシートやアルミペダル、パドルシフトなどが採用され、ドライバーのスポーツマインドを刺激する空間となっています。
パワートレインは、2.0L直列4気筒ターボエンジン、2.5Lダイナミックフォースエンジンを搭載したハイブリッドシステム、そして3.5L V型6気筒エンジンにマルチステージハイブリッドシステムを組み合わせた、3つの選択肢が用意されていました(RSアドバンスでは2.0Lターボと3.5Lハイブリッドのみなど、グレードにより異なります)。
このように、RSグレードは、伝統的なクラウンの快適性や高級感は維持しつつも、「走り」という要素にフォーカスし、より若い世代や、運転を楽しみたいと考えるアクティブなユーザー層を取り込むために設定された、戦略的なグレードなのです。そして、「RSアドバンス」は、そのRSの魅力をさらに高め、より多くの先進装備と快適性を求めるユーザーに応えるための、いわば「RSの完成形」とも言える存在なのです。
RSとRSアドバンスの主な違い一覧!一目で分かる詳細比較表
- RSアドバンスは、RSの装備に加えて、さらに多くの先進・快適装備を標準化
- 安全装備、快適装備、そして内外装の質感向上が主な違い
- 価格差は約50万円程度(モデルにより異なる)
では、具体的にクラウンRSとRSアドバンスでは、どのような装備に違いがあるのでしょうか。一言で言えば、RSアドバンスは、RSをベースに、より多くの先進安全装備や快適装備、そして内外装の質感を高めるアイテムを標準で搭載した、文字通り「アドバンス=進んだ」グレードです。その差は、単にオプションをいくつか追加したというレベルではなく、クルマ全体の満足度を大きく左右するものです。
その価格差は、搭載されるパワートレインや駆動方式によっても異なりますが、おおむねRSアドバンスの方がRSよりも約50万円程度高く設定されていました。この価格差が、具体的にどのような装備の違いとなって表れているのかを、まずは一覧で見てみましょう。
以下は15代目クラウン RSとRSアドバンスの主な標準装備の違い(後期型・代表例)です。
装備項目 | RS | RSアドバンス | 主な違い・アドバンスの追加装備 |
---|---|---|---|
安全装備 | Toyota Safety Sense P | Toyota Safety Sense P + α | ブラインドスポットモニター(BSM)、リアクロストラフィックアラート(RCTA)、インテリジェントクリアランスソナーなど |
ヘッドライト | Bi-Beam LED | Bi-Beam LED (アダプティブハイビームシステム付) | AHSによる夜間視認性の向上 |
ホイール | 18インチアルミ (切削光輝+ダークグレーメタリック) | 18インチアルミ (ブラックスパッタリング塗装) | より上質なホイールデザイン |
シート素材 | ファブリック+合成皮革 | 本革シート | 質感と座り心地の向上 |
運転席・助手席快適機能 | 運転席8ウェイパワーシート | 運転席・助手席ベンチレーション、運転席ポジションメモリー、助手席4ウェイパワーシートなど | 快適性の向上 |
ナビゲーション | T-Connect SDナビ (8インチ) | T-Connect SDナビ (12.3インチワイドディスプレイ) | 大画面による視認性・操作性の向上 |
その他快適装備 | ー | カラーヘッドアップディスプレイ、おくだけ充電など | 利便性の向上 |
※上記は代表的な違いであり、年式やパワートレインによって標準装備・オプション設定が異なる場合があります。必ず最新のカタログや販売店でご確認ください。
この表からも分かる通り、RSアドバンスには、安全運転を支援する機能や、日々の運転をより快適にするための装備が、標準で数多く搭載されていることが分かります。これらの装備を、RSに個別のオプションとして追加していくと、結果的にRSアドバンスの価格に近づくか、あるいはそれを超えてしまうこともあり得ます。つまり、RSアドバンスは、「装備てんこ盛りのお買い得グレード」という側面も持っているのです。この装備差をどう評価するかが、グレード選びの大きなポイントとなります。
エクステリアの違いはここ!ホイールデザインやメッキ加飾
- 基本的なボディデザインやエアロパーツはRSと共通
- RSアドバンス専用デザインのアルミホイールが大きな違い
- 細部のメッキ加飾などで、さりげない上質感を演出
クラウンRSとRSアドバンスのエクステリア(外観)における違いは、実はそれほど多くはありません。RSグレードに共通する、アグレッシブなフロントグリルやバンパー、サイドスカート、そして4本出しマフラーといった、スポーティな基本デザインは、RSアドバンスでもそのまま受け継がれています。そのため、遠目から見ただけでは、両車を見分けるのは少し難しいかもしれません。
しかし、細部に目を向けると、RSアドバンスならではの、さりげない上質感を演出するいくつかの専用装備が見えてきます。最も分かりやすい違いが、アルミホイールのデザインです。標準のRSが、切削光輝とダークグレーメタリック塗装を組み合わせたスポーティなデザインの18インチホイールを履くのに対し、RSアドバンスには、ブラックスパッタリング塗装が施された、より高級感のある専用デザインの18インチホイールが標準装備されます。この光沢のあるブラックのホイールが、RSアドバンスの足元をグッと引き締め、洗練された印象を与えます。(年式や仕様によりデザインは異なります)
また、細かな部分ではありますが、ドアハンドルのメッキ加飾や、サイドウィンドウモールの一部に光沢のある素材が使われるなど、RSアドバンスは、標準のRSよりも、エクステリアの質感を高めるための工夫が凝らされています。これらの違いは、一見すると些細なものに感じるかもしれません。しかし、クルマ全体の佇まいや、オーナーが感じる満足度という点では、決して小さくない差となって表れてくるのです。
その他、RSアドバンスでは、アダプティブハイビームシステム(AHS)を備えた高性能なLEDヘッドライトが標準装備となるため、夜間の視認性が向上するだけでなく、ヘッドライトユニット自体の見た目も、より先進的な印象になります。こうした細かな積み重ねが、RSアドバンスのエクステリアに、RSとはひと味違う「上級感」と「特別感」を与えているのです。
もしあなたが、クラウンRSのスポーティなデザインは好きだけれど、もう少し落ち着いた高級感や、他のRSとは違う個性を求めるのであれば、RSアドバンスのエクステリアは、きっとあなたの期待に応えてくれるでしょう。ただし、その違いが価格差に見合うかどうかは、慎重な判断が必要です。
インテリアの質感と快適装備!本革シートやナビゲーションシステムの違い
- RSアドバンスは、上質な本革シートが標準装備
- 大型の12.3インチワイドディスプレイナビゲーションも魅力
- 運転席・助手席ベンチレーションなど、快適性を高める機能が充実
クラウンRSとRSアドバンスの最も大きな違いが現れるのが、インテリア(内装)の質感と、快適装備の充実度です。毎日触れ、多くの時間を過ごす空間だからこそ、この差はオーナーの満足度に直結します。RSアドバンスのインテリアは、まさに「アドバンス」の名にふさわしい、格段に上質で快適な空間へと進化しています。
その象徴とも言えるのが、シート素材です。標準のRSが、ファブリックと合成皮革を組み合わせたスポーティなシートであるのに対し、RSアドバンスには、しっとりとした手触りの上質な本革シートが標準装備されます。この本革シートは、見た目の高級感はもちろんのこと、体の馴染みも良く、長時間のドライブでも疲れにくいというメリットがあります。さらに、運転席と助手席には、夏場の蒸れを軽減する「シートベンチレーション機能」や、冬場に嬉しい「シートヒーター」も標準で備わります。(シートヒーターはRSにも設定あり)
ナビゲーションシステムも、大きな違いの一つです。RSには8インチのT-Connect SDナビゲーションシステムが搭載されるのに対し(年式により異なる)、RSアドバンスでは、12.3インチという大画面のワイドディスプレイを備えたナビゲーションシステムが標準となります。この大画面は、地図表示の見やすさはもちろんのこと、オーディオや車両設定などの操作性も格段に向上させます。また、メーター内に情報を表示する「カラーヘッドアップディスプレイ」もRSアドバンスの標準装備であり、運転中の視線移動を減らし、安全運転にも貢献します。
その他にも、RSアドバンスには、運転席のポジションを記憶できる「マイコンプリセットドライビングポジションシステム」や、助手席も電動で細かく調整できるパワーシート、スマートフォンを置くだけで充電できる「おくだけ充電」など、日々の運転をより快適で便利にするための機能が満載です。これらの装備は、RSではオプション設定であったり、そもそも選択できなかったりするものも含まれています。
このように、RSアドバンスのインテリアは、単に素材が良くなっただけでなく、ドライバーと同乗者の快適性を徹底的に追求した、まさに「おもてなしの空間」と言えるでしょう。もしあなたが、クラウンRSに、スポーティさだけでなく、レクサスにも通じるような高いレベルの快適性と質感を求めるのであれば、RSアドバンスは間違いなくその期待に応えてくれるはずです。
安全装備・運転支援システムの違い!アドバンスならではの先進機能とは
- RSアドバンスは、より充実した先進安全装備を標準搭載
- ブラインドスポットモニター(BSM)やリアクロストラフィックアラート(RCTA)など
- アダプティブハイビームシステム(AHS)もRSアドバンスの標準装備
近年のクルマ選びにおいて、デザインや走行性能と並んで、非常に重視されるのが「安全装備」と「運転支援システム」の充実度です。トヨタ・クラウンも、この点において常に業界をリードする存在であり続けていますが、RSとRSアドバンスの間には、この安全・運転支援機能においても明確な差が設けられています。
まず、両グレードに共通して搭載されるのが、トヨタの予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense P」です。これには、プリクラッシュセーフティ(衝突被害軽減ブレーキ)、レーンディパーチャーアラート(車線逸脱警報)、オートマチックハイビーム、そしてレーダークルーズコントロールといった、基本的な安全機能が含まれています。これにより、RSでも十分に高いレベルの安全性が確保されています。
しかし、RSアドバンスには、これらの機能に加えて、さらに高度で緻密な安全運転支援システムが標準で装備されます。その代表的なものが、「ブラインドスポットモニター(BSM)」と「リアクロストラフィックアラート(RCTA)」です。BSMは、ドアミラーでは確認しにくい後側方からの接近車両を検知し、ドアミラー内のインジケーターで知らせてくれる機能で、車線変更時の安全確認をサポートします。RCTAは、駐車場からバックで出る際などに、左右後方から接近する車両を検知し、警報と表示で注意を促してくれる機能です。これらの機能は、日常のヒヤリとする場面を大幅に減らしてくれる、非常に心強い味方です。
また、夜間の視認性を高める「アダプティブハイビームシステム(AHS)」も、RSアドバンスの大きな魅力です。これは、先行車や対向車を検知すると、その部分だけを自動的に遮光し、それ以外の範囲はハイビームで照らし続けるという高度なシステムです。これにより、ドライバーは常に最大限の視界を確保しながら、周囲のクルマに眩惑を与える心配もなく、夜間の安全運転に大きく貢献します。標準のRSに搭載されるオートマチックハイビーム(ハイとローを自動で切り替える)よりも、格段に進んだ機能と言えるでしょう。
これらの先進安全装備は、RSではオプションのパッケージを選択しないと手に入らないものや、そもそも設定がないものも含まれています。もし、あなたがクラウンに、最高の安全性能と、ストレスの少ない運転支援を求めるのであれば、RSアドバンスを選択する大きな理由となるでしょう。
パワートレインと走行性能に差はある?2.0Lターボとハイブリッドモデル
- 搭載されるエンジンやハイブリッドシステム自体は、RSとRSアドバンスで共通
- ただし、RSアドバンスの方が選択できるパワートレインが限られる場合がある
- 走行性能に直接的な差はないが、装備の違いが乗り心地に影響する可能性も
クラウンRSとRSアドバンスの選択で気になるのが、「パワートレインや走行性能に違いはあるのか?」という点でしょう。結論から言えば、搭載されているエンジンやハイブリッドシステム、そしてサスペンションの基本セッティングといった、クルマの基本的な走行性能に関わる部分については、RSとRSアドバンスの間に直接的な差は設けられていません。
例えば、15代目クラウンのRSグレードには、2.0L直列4気筒ターボエンジン(8AR-FTS型)、2.5L直列4気筒ダイナミックフォースエンジンを搭載したハイブリッドシステム(A25A-FXS型)、そして3.5L V型6気筒エンジンにマルチステージハイブリッドシステムを組み合わせた高性能版(8GR-FXS型)という、3種類のパワートレインが用意されていました。そして、RSアドバンスを選んだ場合でも、選択したパワートレインがRSと異なるということは基本的にはありません。つまり、同じ2.0Lターボモデルであれば、RSもRSアドバンスも、エンジンが生み出すパワーやトルク、そしてトランスミッションのフィーリングは同じです。
ただし、注意点として、RSアドバンスの方が、選択できるパワートレインのバリエーションが、標準のRSよりも絞られているケースがありました。例えば、3.5LハイブリッドはRSアドバンスのみの設定であったり、逆にRSアドバンスでは2.5Lハイブリッドが選べない(2.0Lターボと3.5Lハイブリッドのみ)といった具合です。このあたりは、年式やモデル(前期型・後期型)によって細かく仕様が異なるため、購入を検討する際には、必ず最新のカタログやディーラーで確認が必要です。
走行性能に直接的な差はないものの、装備の違いが間接的に乗り心地やフィーリングに影響を与える可能性はあります。例えば、RSアドバンスに標準装備される本革シートは、ファブリックシートよりも重量があるため、ごくわずかですが車両重量が増加します。また、ホイールのデザインが異なれば、バネ下重量にも影響が出るかもしれません。しかし、これらは、一般のドライバーが体感できるほどの大きな差とは言えないでしょう。
したがって、RSとRSアドバンスのどちらを選ぶかという判断において、「走行性能」という要素は、決定的な違いにはなりにくいと言えます。むしろ、エクステリアの好みや、インテリアの質感、そして安全・快適装備の充実度といった、他の要素が、あなたの選択を左右することになるでしょう。
あなたに最適なのはどっち?RSとRSアドバンスの賢い選び方
- 価格差は約50万円!その価値は本当にあるのかを徹底検証
- RSアドバンスを選ぶべき人!こんな装備を求めるなら絶対にコレがおすすめ
- RSでも十分満足できる人!必要最低限のスポーティさを求めるなら
- 中古車市場での人気と価格差は?リセールバリューも考慮した選択
- 購入時の注意点!前期型と後期型での装備の違いはあるのか?
- クラウンRSとRSアドバンスに関するFAQ(よくある質問)
- 【まとめ】RSとRSアドバンスの違いを理解し、後悔しないクラウン選びを
価格差は約50万円!その価値は本当にあるのかを徹底検証
- RSアドバンスはRSより約50万円高価(パワートレインにより変動)
- 追加される装備の個別価格を考えると、割安感がある場合も
- 最終的には、その装備にどれだけの価値を見出すかという個人の判断
クラウンRSとRSアドバンスの選択において、最も現実的で、そして頭を悩ませるのが、その「価格差」です。前述の通り、同じパワートレインを選んだ場合、RSアドバンスはRSよりもおおむね50万円程度(年式や仕様により40万円~60万円程度の幅があります)高く設定されています。この価格差は、決して小さな金額ではありません。果たして、RSアドバンスに追加される装備に、それだけの価値はあるのでしょうか。
この問いに答えるためには、RSアドバンスに標準装備され、RSには標準装備されない(あるいはオプションとなる)主なアイテムの価値を、個別に考えてみる必要があります。例えば、本革シート、12.3インチワイドナビゲーション、ブラインドスポットモニター(BSM)、リアクロストラフィックアラート(RCTA)、カラーヘッドアップディスプレイ、アダプティブハイビームシステム(AHS)、専用デザインホイールなどです。
これらの装備を、もしRSグレードに個別のメーカーオプションやディーラーオプションとして追加していった場合、その合計金額は、多くの場合で50万円を優に超えてしまうでしょう。特に、本革シートや高機能ナビゲーションシステムは、単体でも数十万円する高価なオプションです。そう考えると、RSアドバンスの価格設定は、これらの人気装備をまとめてパッケージングした「お買い得なセットオプション」と捉えることもできます。
しかし、重要なのは、これらの追加装備が「自分にとって本当に必要か、そしてその価値を感じられるか」という点です。例えば、本革シートの手入れが面倒だと感じる人や、ナビはスマートフォンのアプリで十分だと考える人にとっては、RSアドバンスの装備は過剰であり、その分の価格差は無駄な出費となってしまいます。逆に、最新の安全装備は何よりも優先したい、あるいは、せっかくクラウンに乗るなら最高の快適性を味わいたい、と考える人にとっては、RSアドバンスの価格差は十分に納得できるものとなるでしょう。
結局のところ、この価格差に価値があるかどうかは、あなたの価値観と予算、そしてクラウンに何を求めるかによって変わってきます。RSアドバンスの装備内容を一つ一つ吟味し、「この機能が50万円の価値を生み出すか?」と自問自答してみることが、後悔しない選択のための第一歩です。ディーラーでそれぞれの装備を実際に体験し、その便利さや質感を確かめてみるのも良いでしょう。
RSアドバンスを選ぶべき人!こんな装備を求めるなら絶対にコレがおすすめ
- 最新の安全装備と運転支援機能を重視する人
- 本革シートなど、内装の質感と快適性を高いレベルで求める人
- リセールバリューを少しでも高く維持したいと考える人
では、具体的にどのような人がクラウンRSアドバンスを選ぶべきなのでしょうか。RSアドバンスが持つ数々の追加装備に魅力を感じ、その価格差に納得できるのは、次のような価値観を持つ人たちと言えるでしょう。
まず、何よりも「安全性能」を最優先に考える人です。RSアドバンスには、ブラインドスポットモニター(BSM)やリアクロストラフィックアラート(RCTA)、アダプティブハイビームシステム(AHS)といった、標準のRSにはない先進安全装備が標準で搭載されています。これらの機能は、日々の運転におけるヒヤリとする場面を減らし、事故を未然に防ぐための強力なサポートとなります。「安心・安全はお金で買えるなら買いたい」と考える人にとって、RSアドバンスは非常に魅力的な選択肢です。
次に、「内装の質感と快適性」に徹底的にこだわりたい人です。上質な本革シートの座り心地、大型12.3インチナビゲーションの見やすさと操作性、そしてシートベンチレーションやポジションメモリーといった快適機能。これらは、毎日の運転をより豊かで心地よいものに変えてくれる、まさに「おもてなし」の装備です。せっかくクラウンという高級車に乗るのだから、その移動空間には最大限の贅沢を求めたい、という人にはRSアドバンスが最適です。
そして、意外なポイントかもしれませんが、「リセールバリュー(再販価値)」を少しでも高く維持したいと考える人にも、RSアドバンスはおすすめです。一般的に、中古車市場では、装備が充実した上級グレードの方が人気が高く、査定額も高くなる傾向にあります。RSアドバンスに標準装備されているような人気アイテムは、数年後にクルマを売却する際に、プラスの評価を受けやすいのです。初期費用は高くても、結果的に手放す時の価値も高ければ、実質的な負担額は抑えられる可能性があります。
これらの要素に加えて、単純に「どうせ買うなら一番良いものを」という満足感を求める人や、細かなオプション選択が面倒で「全部入り」を好む人にも、RSアドバンスは向いていると言えるでしょう。もしあなたが、これらのいずれかに当てはまるのであれば、RSアドバンスを選択することで、きっと後悔のない、満足度の高いクラウンライフを送ることができるはずです。
RSでも十分満足できる人!必要最低限のスポーティさを求めるなら
- RSの基本的なスポーティデザインと走りで十分満足できる人
- 先進安全装備や快適装備は、そこまで重視しない人
- 少しでも購入費用を抑えたい、コストパフォーマンスを重視する人
一方で、必ずしもRSアドバンスの豪華な装備全てが必要というわけではなく、「標準のRSでも十分に満足できる」という人も、もちろんたくさんいます。RSアドバンスの価格差(約50万円)を、他のこと(例えば旅行や趣味など)に使いたいと考える、より現実的でコストパフォーマンスを重視するタイプの人たちです。
まず、RSグレードの基本的なエクステリアデザインや、スポーティな足回り、そしてパワートレインが生み出す走りの楽しさ、これらに魅力を感じているのであれば、標準のRSでもその本質は十分に味わうことができます。RSアドバンスとの外観上の大きな違いは主にホイールデザイン程度であり、基本的な「カッコよさ」は共通です。エアロパーツや4本出しマフラーといった、RSならではの迫力は、標準RSでも健在です。
また、先進安全装備や快適装備についても、「Toyota Safety Sense P」という基本パッケージはRSにも標準装備されているため、日常的な安全運転を支援する機能は十分に備わっています。BSMやRCTAといったプラスアルファの機能は、「あれば便利だけど、なくても困らない」と割り切れるのであれば、RSでも問題ありません。同様に、シート素材も、RSのファブリックと合成皮革のコンビシートは、スポーティでホールド性も良く、本革に強いこだわりがなければ、十分に満足できる質感を持っています。
そして何よりも、少しでも購入費用を抑えたいと考える人にとっては、RSアドバンスとの価格差は大きな魅力となります。浮いた予算で、好きなディーラーオプションを追加したり、あるいは納車後のカスタム費用に充てたりすることも可能です。必ずしも「全部入り」がベストではなく、自分にとって本当に必要なものを見極め、賢く選択することが、結果的に満足度の高い買い物に繋がるのです。
RSアドバンスの豪華な装備に心を奪われがちですが、一度立ち止まって、「自分にとって、本当にそれは必要なのか?」と問いかけてみることが大切です。「RS」というグレードが持つ、本質的なスポーティさとクラウンならではの上質さ。それに共感できるのであれば、標準のRSは、非常にコストパフォーマンスに優れた、賢い選択となるでしょう。
中古車市場での人気と価格差は?リセールバリューも考慮した選択
- 中古車市場でも、RSアドバンスの方がRSより高値で取引される傾向
- 装備の充実度が、中古車としての魅力と価格に反映される
- ただし、年式や走行距離、状態によって価格差は変動する
新車で購入する場合だけでなく、中古車でクラウンRSまたはRSアドバンスを検討している方にとっても、両グレードの違いと価格差は重要なポイントです。一般的に、中古車市場においても、新車時と同様に、装備が充実したRSアドバンスの方が、標準のRSよりも高い価格で取引される傾向にあります。
その理由は、中古車を購入するユーザーもまた、より多くの機能や快適性を求める傾向があるからです。特に、本革シートやサンルーフ、そしてBSMのような人気の安全装備は、中古車市場での需要が高く、それらが標準で備わっているRSアドバンスは、魅力的な物件として映ります。そのため、同じ年式、同じくらいの走行距離であれば、RSアドバンスの方が数十万円高くても、買い手がつきやすいのです。
この傾向は、将来的にクルマを売却する際の「リセールバリュー」にも影響します。新車購入時にRSアドバンスを選んでおけば、数年後に売却する際にも、標準のRSより高い査定額が期待できる可能性があります。もちろん、リセールバリューは、その時の市場の状況や、クルマの状態(走行距離、修復歴の有無、内外装の綺麗さなど)によって大きく変動するため、一概には言えません。しかし、一般論としては、装備が豊富な上級グレードの方が、リセールにおいては有利に働くことが多いです。
ただし、中古車の場合、新車時ほどの明確な価格差が、常に維持されるわけではありません。年式が古くなったり、走行距離が伸びたりするにつれて、グレード間の価格差は縮まっていく傾向にあります。また、特定のオプション(例えばサンルーフなど)の有無が、グレードの違い以上に価格に影響を与えることもあります。そのため、中古車でRSかRSアドバンスかを比較検討する際には、単にグレード名だけでなく、個々の車両の装備内容と状態、そして価格を、総合的に判断する必要があります。信頼できる中古車販売店で、両グレードの在庫を実際に見比べてみるのが良いでしょう。クラウンの中古車査定相場については、こちらの記事も参考にしてみてください。
新車であれ中古車であれ、RSとRSアドバンスのどちらを選ぶかは、最終的にはあなたの予算と価値観次第です。しかし、リセールバリューという長期的な視点も加味して検討することで、より納得のいく選択ができるはずです。
購入時の注意点!前期型と後期型での装備の違いはあるのか?
- 15代目クラウンは、2020年11月にマイナーチェンジ(後期型へ)
- 後期型では、内外装デザインの一部変更や、安全・快適装備の進化が見られる
- RSとRSアドバンスの装備差も、前期型と後期型で若干異なる場合がある
クラウンRSとRSアドバンスの違いを比較する上で、もう一つ注意しておきたいのが、「前期型」と「後期型」の存在です。15代目クラウン(S22#型)は、2018年のデビュー後、2020年11月にマイナーチェンジが行われ、後期型へと進化しました。このマイナーチェンジでは、内外装のデザインに手が加えられただけでなく、安全装備やインフォテインメントシステムなどもアップデートされています。
そのため、RSとRSアドバンスの具体的な装備内容や、その差についても、前期型と後期型では若干異なる場合があります。例えば、後期型では、RSアドバンスに標準装備される12.3インチの大型ディスプレイが、より高精細なものに改良されたり、Toyota Safety Senseの機能が一部向上したりしている可能性があります。また、ホイールのデザインや、選択できるボディカラー、内装の加飾なども、前期型と後期型で細かな違いが見られることがあります。
中古車でクラウンRSまたはRSアドバンスを探す際には、この前期型か後期型かという点も、価格や満足度を左右する重要な要素となります。一般的には、改良が加えられた後期型の方が人気が高く、中古車価格も高めに設定される傾向にあります。しかし、前期型でも、RSアドバンスであれば十分に魅力的な装備が揃っていますし、価格がこなれているというメリットもあります。
重要なのは、購入を検討している車両が、具体的にどの年式で、どのような装備内容なのかを、販売店に詳しく確認することです。特に、RSとRSアドバンスの装備差は、年式によって微妙に変わることがあるため、「RSアドバンスだから、あの装備が付いているはず」と思い込まずに、必ず現車で、あるいは装備表で、一つ一つの機能を確認するようにしましょう。
例えば、あなたがどうしても欲しい特定の装備(BSMや本革シートなど)があるのであれば、それがRSではオプションだったのか、RSアドバンスでは標準だったのか、そして前期型と後期型で扱いに違いはなかったのか、といった点を、事前に調べておくことが大切です。こうした細かな情報収集が、結果的に「こんなはずじゃなかった」という後悔を防ぎ、満足のいくクラウン選びに繋がるのです。
クラウンRSとRSアドバンスに関するFAQ(よくある質問)
- RSアドバンスでないと選択できないメーカーオプションはありますか?
- RSとRSアドバンスで、実際の走行フィーリングに違いは出ますか?
- 中古車の場合、RSアドバンスの価格差はどれくらいが妥当ですか?
ここでは、クラウンRSとRSアドバンスの違いに関して、購入検討者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q1. RSアドバンスでなければ選択できない、特別なメーカーオプションなどはありましたか?
A1. 15代目クラウンの場合、RSアドバンス専用のメーカーオプションというのは、実はそれほど多くありませんでした。RSアドバンスの主な特徴は、標準のRSではオプション扱いとなるような多くの人気装備が、「最初から標準で付いている」という点にあります。ただし、例えば一部の特別な内装色や、高度なオーディオシステムなどが、RSアドバンスをベースにしないと選択しにくい、あるいは組み合わせられない、といったケースは存在しました。具体的なオプション構成は、年式や販売時期によっても異なるため、詳細は当時のカタログやディーラーで確認が必要です。
Q2. RSとRSアドバンスで、エンジンやサスペンションが同じ場合、実際の走行フィーリングに体感できるほどの違いは出ますか?
A2. 基本的なパワートレインやサスペンション構造が同じであれば、走行性能そのものに大きな違いが出ることは考えにくいです。しかし、前述の通り、RSアドバンスは本革シートなど、標準RSよりも重量のある装備が追加されるため、ごくわずかながら車両重量が増加します。これが、例えば0-100km/h加速のタイムや、コーナーリング時の限界性能といった、シビアな領域でのフィーリングに、本当にごく僅かな差を生む可能性はゼロではありません。ただし、日常的な運転で、その違いを明確に体感できるかというと、かなり難しいレベルでしょう。むしろ、タイヤの銘柄や空気圧、そして路面状況の方が、よほど大きな影響を与えます。
Q3. 中古車で探す場合、RSとRSアドバンスの価格差は、どれくらいが妥当な範囲と考えられますか?
A3. これは非常に難しい質問で、一概には言えません。新車時の価格差(約50万円)が、そのまま中古車価格にも反映されるとは限りません。年式が古くなるほど、また走行距離が伸びるほど、グレード間の価格差は縮小していく傾向にあります。一般的には、同程度の年式・走行距離であれば、RSアドバンスの方が20万円~40万円程度高く取引されることが多いようですが、これはあくまで目安です。車両の状態や人気オプションの有無、そして市場の需給バランスによって、価格差は大きく変動します。複数の物件を比較検討し、その価格差が、自分にとって装備の魅力に見合うものかどうかを、慎重に判断することが大切です。
【まとめ】RSとRSアドバンスの違いを理解し、後悔しないクラウン選びを
トヨタ クラウンのスポーティグレード「RS」と、その上級仕様である「RSアドバンス」。その違いを様々な角度から比較してきましたが、最後に重要なポイントをまとめます。
- RSはスポーティさの基本形:専用エクステリアと引き締められた足回りで、「走る楽しさ」を追求したクラウン。Toyota Safety Sense Pなど基本的な安全装備も備わる。
- RSアドバンスは「全部入り」の完成形:RSの魅力に加え、本革シート、大型ナビ、BSMやRCTAといった先進安全・快適装備を標準でフル装備。内外装の質感も向上。
- 価格差は約50万円:この価格差を、追加される装備の価値に見合うと判断できるかどうかが、最大の選択ポイント。個々の装備の必要性を吟味することが重要。
- 走行性能に大きな差はない:エンジンやサスペンションの基本は共通。ただし、RSアドバンスの方が選択できるパワートレインが限定される場合がある。
- 中古車選びも慎重に:RSアドバンスの方がリセールは有利な傾向だが、価格差は変動する。前期型と後期型での装備の違いにも注意が必要。
結論として、クラウンRSとRSアドバンスのどちらを選ぶべきかは、あなたがクラウンに何を求め、どこに価値を見出すかによって変わってきます。「スポーティなクラウンが欲しいけれど、予算は抑えたい」という方にはRSが、「せっかくなら最高の装備と快適性を味わいたい」という方にはRSアドバンスが、それぞれ最適な選択となるでしょう。この記事が、あなたの後悔のないクラウン選びの一助となれば幸いです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
同じ「RS」という名前でも、ここまで細かく装備や仕様に違いがあると、本当にどちらを選べば良いのか迷ってしまいますよね。特にクラウンのような、歴史と伝統のあるクルマであれば、グレード選びも慎重になるものです。
私自身、クルマを選ぶ際には、カタログを隅々まで読み込み、ネットの情報を漁り、そして実際にディーラーに足を運んで実車を確かめる、というプロセスを非常に大切にしています。この記事を書きながら、改めてその情報収集の重要性と、自分にとって何が大切かを見極めることの難しさを感じました。この記事が、皆さまのクラウン選びという、楽しくも悩ましい時間の一助となり、最高のカーライフへと繋がることを、心から願っております。